ISSEY MIYAKE 2021年のホリデーシーズンアイテム「WOOL SHELL KNIT」の為の映像とパッケージをデザインしました。
映像は、WOOL SHELL KNIT が持つ巻貝のような形状の組成から生まれる柔らかい質感を体感できるようなディテールから、服のデザインから引き出せるユーモアのある動き、そして服と人間との関係性の中にある豊かさを観察するように、紙芝居のようなアニメーションで目の中に喜びを生むような展開の構成をデザインしています。映像は最後に再び服のディテールを見て終わります。
パッケージのデザインは、このお仕事のお話をいただいたタイミングはコロナ禍のはじまりから一年ほど経った時でしたので、大きく生活への意識が変わっていた時でした。以前であればホリデーシーズンのパッケージであれば、ある種のがっしりとしたボックスのような、華美さや特別さをまとったデザインになりがちだと思いますが、大きく個人の感覚的にもそういった価値観から、もっと素直な生活への眼差しを大事にしようとする価値観へと変化していることを感じていました。ですので、今回のホリデーシーズンのパッケージは「紙で包むだけ」という無理のない素直なデザインを提案しました。
ハトロン紙とよばれる、薄手で柔らかい白い紙に、白インクと銀インクをつかってグラフィックを載せていますが、このグラフィックは、大阪大学大学院教授・生命科学者の近藤滋さんの研究による、貝殻の形状ジェネレーターで生成した貝の形状グラフィックです。実はすべての種類の貝の形状をいくつかのパラメータのバランスだけでつくることができるのです。二枚貝から巻貝までも全種。そんな自然の形である貝の形に潜む面白さや豊かさを数理で解いていくとても豊かで面白い研究です。今回のイッセイミヤケのシーズンアイテムは、数理とはまた別の視座から貝殻などの自然の形から発想して生まれていますが、共に自然のありのままの姿と向き合った時に立ち上がる美しさと好奇心が共通しているなと感じました。ですので、服を購入して頂いた人達と、貝の研究の文化とを結び繋げるような構造をデザインできないかと思いました。きっとグラフィックデザイナーは、情報の色形を構成する以外にも、こういった、存在と存在を結びつけることのデザインができる可能性があると感じています。
そういう気持ちでデザインをしました。
映像はこちらから
貝殻形状の研究: Sigeru Kondo
Direction + Design: Tomohiro Okazaki
貝のグラフィックトレース: Karen Nakajima
Sound design: Tokuro Oka + Kousuke Anamizu
Model: Kovitch